アピール

意見表明

 

 

*理事会での協議を経て、本誌5月号及び6月号「事務局より」にて報告し、6月2日

の総会にてお知らせいたしましたが、本会理事会として以下の意見表明をいたします。

 

講談社発行『はじめてのはたらくくるま』について(意見)

 

2019年6月2日

一般社団法人日本子どもの本研究会 理事会

 

 昨年11月に講談社より出版されたこの本は、版元のHPによれば、「コンパクトで頑丈、持ち運びにも最適。プレゼントとして大好評をいただいております。(中略)消防車、救急車、パトカー、バス、トラック、建機、さらには潜水艦や戦車と、乗り物好きのお子さんが大満足する美しい写真満載でお届けします。(後略)」とあり、大人も子どもも楽しめる写真絵本として紹介されています。

 けれどもまず驚くのは、表紙に「水平に銃を構える自衛隊員の写真を」載せ、ページを繰ると後半からは、「りくじょうじえいたい」「こうくうじえいたい」「かいじょうじえいたい」として潜水艦や戦車など戦争で使う乗り物が満載されていることです。潜水艦や戦闘機は“くるま”ではないことなど、編集も杜撰ですが、何よりも、本書を3歳から6歳向けとして勧めており、小さな子どもにこのような戦争に使う乗り物を“はたらくくるま”としていることに驚きを禁じ得ません。

 私たち「日本子どもの本研究会」は、先の戦争の深い反省のもと、1967年に創立以来、幼小中高の学校や学校図書館、公共図書館、地域文庫など様々な場で、未来ある子どもたちに読書の楽しみを知らせ、平和を愛する人間になってもらいたいと願い、日々出版される多くの児童書を吟味し、子どもたちに勧めたい本を手渡してきました。そのような活動を通して感じた、絵本や児童書が子どもたちにもたらす大きな影響を考えるとき、この本の内容に深く危惧の念を抱きます。子どもたちにとって、戦争に使う乗り物を普通の車と同列にとらえられることに大きな不安を覚えます。

 講談社は誰もが知っている大手の出版社であり、このような本を出版したことには大きな責任があると考えます。出版社としての責任と矜持を持って対処していただくことを切に望みます。

 

 

私たちは安全保障関連法に断固抗議します

 

 私たち日本子どもの本研究会は設立以来50年近くにわたって、戦争と平和を描いたたくさんの子どもの本を子どもたちに手渡し、子どもたちとともに考え、その大切さを伝えてきました。本年8月には、日本子どもの本研究会全国大会において「平和へつなぐ子どもと本の出会い 戦後70年の節目の年、今いちど『子どもの本』と『平和』を見つめ直したい」をメインテーマにつどい、記念講演・分科会などのプログラムを通して多くの参加者とともに、かけがえのない平和を守ること、次世代へつないでいくことの意義を確認しあいました。

 

 しかし919日、多くの市民の反対の声を無視して安全保障関連法案は「採決」されました。安倍晋三首相は、「日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐために必要な法案だ」とし、「国民の理解を得るために丁寧に説明していきたい」と言っていましたが、国会の審議を見ていても法案の不十分さが明らかになるばかりで、けっして十分な説明がなされたわけではなく、数の論理に任せた横暴な抜き打ち強行採決でした。国のあり方を根底から覆すような重大な決定が、民主主義の理念をも無視する形でなされたこと、国民の6割以上が反対し、慎重な論議を望むなかで行われた強引な採決に対して、私たちは非常な怒りを感じ、同時に子どもたちの未来に対して大きな危機感を抱きます。

 

 私たちの父母や祖父母は、かつて日本が行った侵略戦争で数多くの若者を戦地で失いました。そして広島・長崎、また沖縄などで悲惨な体験をしたばかりか、近隣諸国にも大きな傷跡を残したことについて深く後悔し、その尊い犠牲のもと、憲法九条で戦争放棄と永久平和を誓い、憲法の理念によって平和で安全な国をつくりあげてきました。私たちは、それを私たちの子どもや孫たちに確実に手渡す義務があります。この70年の努力を、断じて無駄にしてはなりません。

 

 私たちは子どもたちとともに、本を通じて平和の大切さを学びあい、平和な社会の実現を目指してきました。その活動をこれからも地道に続けます。そのためにも平和憲法を守り、戦争国家への転換を力の限り阻止することを表明し、ここに今回の安倍政権の暴挙と安全保障関連法に断固抗議し、廃止を求めます。

 

2015109

日本子どもの本研究会 理事会