第1回作品賞受賞作を紹介します

『シロナガスクジラ』

 ジェニ・デズモンド 作/福本由起子 訳/

 BL出版   

 

シロナガスクジラは、地球上でいちばん大きな生きもの。世界中の海に生息しているが、実際には、ほとんど目にすることはない。長さは30メートル、重さはカバ60頭分位で、陸上にはシロナガスクジラのように、大きな生きものはいない。生きものの骨は、陸上では、すごい重さを支えることができないからだ。海水の塩のお陰で巨大なクジラは浮くことができる。口は人が50人も入れる位の大きさだ。

本書では、その大きさや生態をわかりやすく対比し、作者独特のコラージュや色鉛筆、水彩などを使った手法の絵で、魅力的に表現している。読者は、登場する男の子に自分を重ね合わせ、まるでその場で経験しているように、興味を持ち楽しむことができる。

作者は乱獲や自然現象の変化で絶滅の危機にある「シロナガスクジラ」を大切にすることを訴え、自然界のあらゆるものを大切にしていくことを本書に託している。子どもから大人まで一緒に楽しみ、考えていきたい絵本である。(鈴木佳代子)

 

『レッド・フォックス-カナダの森のキツネ物語-』

チャールズ・G・D・ロバーツ 作/

チャールズ・リビングストン・ブル 画/

桂 宥子 訳/福音館書店

  

 大自然の懐でたくましく成長していく野生動物の生活を、躍動感あふれる語りくちで物語る動物物語。自然とともに生きていくキツネの姿から読者の興味を自然界へと広げてくれる作品は、児童文学として高く評価できる。

 自然の摂理を本能的に学びながら、度重なる困難を知恵と洞察力で乗り越えていくレッド・フォックスの姿は、生きる意欲を呼び覚ます感動を子どもたちに与えてくれるだろう。読者は、主人公のキツネに寄り添いながら自然の驚異と苛酷さを学ぶことになり、こうした読書体験は読者の心に深く残り、情感を豊かに育ててくれるにちがいない。長く読み継がれてほしい動物物語だ。1905年に出版され、世紀を超えて、今も英語圏で読み継がれている本作品を翻訳し、日本に紹介した功績に感謝したい。

 詩人でもあり写実的動物物語の分野をシートンとともに確立した、「カナダ文学の父」と呼ばれるチャールズ・G・D・ロバーツの作品。   (米田久美江)

 

『深く、深くほりすすめ!〈ちきゅう〉  

  世界にほこる地球深部探査船の秘密』 

 山本省三 著/友永たろ 絵/くもん出版  

 

 地球に生きるすべての生きもののために、私たちの地球の内部はどのようになっているのかを調べることが、探査船の使命。探査船〈ちきゅう〉の構造やしくみは一見複雑で難解だが、著者は綿密に調べて内容を自分のものとして把握し、子どもたちにわかりやすくかみ砕いて語ってくれる。挿絵も理解に大いに役立っている。1000m以上のパイプを垂直に海底に下ろすための工夫や引き上げるときの噴出防止装置など科学の最先端技術には目を見張る。パイプが採取した46万年前の地層に付いていた微生物が餌を食べたとは驚きである。

2011年3月11日、東日本大震災の震源付近の地層は、スメクタイトという水分を多く含んだ薄い層であったために、プレートの境目がより滑らかに動いて海面の浅いところまでずれたため、大きい津波となったことが突きとめられた。また最近注目されているメタンハイドレードの掘削には、より新しい技術が必要であると指摘している。

 このような作品を通して知らなかったことを知る喜びが得られ、さらに知的好奇心が広がる。                              (小澤恭子) 

50周年を記念しての特別賞です

『30 代記者たちが出会った戦争-激戦地を歩く-』(岩波ジュニア新書)

     共同通信社会部 編/岩波書店

 

本書は「元日本兵の方たちが生きているうちに、あの戦争のことをしっかり伝えたい」の思いから、戦後70年である2015年に企画された共同通信社会部の連載記事を大幅に書き直したもの。30代の記者たち8人が「①記者が現地に足を運ぶ、②かかわった元日本兵や被害者らの話を聞く、③当時の状況に記者が思いをはせる―を、取材の課題にし(本書 おわりに)」激戦地を取材した。日本兵がどういった状況に置かれ、何を考え、どんなことをしたのか。一般の兵士は無謀な作戦の犠牲になったことも痛感したという。 

これまで語ろうとしなかった人たちからの日本軍の加害の事実も報告されている。

「戦争体験者が今日まで生き、語り、伝え続けたことの尊さを」学んだことも伝えている。戦争を知らない世代から、さらに次の世代へ伝える確かな一冊として評価できる作品である。(石井啓子)

 

『明日の平和をさがす本-戦争と平和を考える

     絵本からYAまで 300 -』

 宇野和美、さくまゆみこ、土居安子、西山利佳、野上暁 編著/岩崎書店

 

 2000年から2016年に刊行された「戦争と平和を考える」子どもの本、約5万冊から300冊を厳選したブックガイド。「戦争って何だろう?」、「声なきものたちの戦争」、「伝える人 語りつぐ意思」、「平和をつくるために」など8章に、作家、研究者、図書館司書などが読みどころをしっかりと紹介している。若い世代にも手にとってもらいたいと、元「SEALDs」選書班や「安保関連法に反対するママの会」のメンバーも執筆。「読み継ぎたい平和の絵本」などのコラム18本も掲載している。本の舞台となった地域MAPや時代年表・索引など資料編も参考になる。

戦争のない平和な世界をつくるには、どうすれば良いのか、今こそ「平和」を考えるための本として高く評価された。戦争と平和の本を子どもたちに手渡すときに、そして戦争についての事実を伝えるためにも、「戦争と平和を考える」きっかけとなるブックガイドとして、中学生以上の子どもたちに手渡したい1冊である。  (近藤君子)